この日は、市川市の民間福祉作業所アート・ワーク・ショップの方々がきていた。あいにくの雨だったが、みんなの顔は晴ればれとしている。今日で2回目という高橋信雄さんは「最初に乗ったときはね、いままで生きててよかったぁって思いましたよ、片足がない自分が、まさか馬に乗れるなんて、夢にも思ってなかった」と、目を輝かせる。
体幹障害と言語障害の芦田晃志さんも、うれしさを押さえきれずに、気持ちを伝えようとしてくれる。アート・ワーク・ショップ所長の藤川さんが「この前も乗って、2回目なのよね、もうすぐ順番だからね」と言うと、いっそう顔がほころんだ。藤川さんは、「みんな、乗馬を経験したことで自信がついて、表情が豊かになりましたね。障害者というと、どうしても外に出る機会が少なくなりがちですが、どんどん外に出て、できる限り、いろんなことに挑戦したいと思っているんです」と目を細める。
ほかにも、自閉症、聴覚障害、脳機能損傷、ダウン症、不登校、心循環器系疾患などにも効果があるという。リハビリにとどまらず、競技として取り組む人もいる。脳性マヒによる四肢体幹機能障害の荒井育子さんは、ここにくると車椅子から馬に乗り換え、手綱を握る。1999年から乗馬を始めて、翌年の全国障害者乗馬交流大会の初級馬場馬術部門で優勝した。バラリンピックへの出場をめざして、練習中。
また、ここでは、乗馬だけでなく、障害者の雇用面にもカを入れている。養護学校を卒業後、サイトウ乗馬苑で働いている山崎勉さんは視覚障害と股関節に障害をもつ知的障害者、ここで働く障害者たちは、報酬の一部として、乗馬を楽しむことができる。
「すごいんですよぉ、勉なんかは、ここにきたときは歩くのもゆっくりゆっくりだったのに、毎日馬に来っているうちに、だんだん股関節が柔らかくなって、今なんかは、階段もトントントントンって上り下りするもんね」山崎さんのおもな仕事はニワトリ小屋の掃除と出荷する前の卵の卵ふき。
「不景気っていうのもあって、この子たちのような子が働ける場所がなかなかなかないんですよ」障害者乗馬の料金は、1人あたり2500円。1人の乗馬につき4人のスタッフが必要で、熟練したスタッフに加え、ボランティアが大きなカとなっている。日本での認知度はまだ低く、実際、市や県の議員や国会議員も視察に訪れている段階で、行政のサポート体制はこれから整備していくというのが現状だ。 ヨーロッパでは古くから、心身ともに効果の高い療法として認められ、乗馬療法士が国家資格として認可されている国もある。私財をなげうっての経営は苦しいが、やめるわけにはいかないという。
「みんなの笑顔と喜ぶ顔を見るたびに、続けるべきだって確信がわくんです。障害のあるこの子たちの、行く場所をつくってあげたい、楽しく生きいきと働ける場所をつくりたいんです。」と夢は尽きない。
「パンプキン」インタビュー特集より |